薬物で怪我をした場合

(1)はじめに

化学技術の発達により、薬物による死傷事故も増加しています。
化学物質を取り扱う際には、通常の業務とは異なった配慮が必要であり、以下、使用者の安全配慮義務違反が認められた裁判例を紹介します。

(2)裁判例の紹介

東京地判平成30年7月2日

事案の概要 化学物質を取り扱う検査分析業務に従事していた労働者(被災労働者・A)が、有機溶剤中毒および化学物質過敏症に罹患した事案。
判決要旨 裁判所は、事業者は、安衛法や安衛則および有機溶剤中毒予防規則(有機則)に基づいて局所排気装置等設置義務を負っていること、有機則等の規制の趣旨は、労働者の健康被害を防止する点にあること、有機溶剤の毒性は急性中毒や慢性中毒の形で人体に致命的に作用することがあることに照らせば、会社は、Aに対し、雇用契約上の安全配慮義務として、局所排気装置等設置義務や保護具支給義務を負っていたというべきであるとして、損害賠償請求を認めました。

大阪地判平成16年3月22日

事案の概要 廃油の収集、処理等を業とする会社の従業員であったAが、本社工場にある廃溶剤タンクの清掃作業中、タンク内部において、有機溶剤中毒により死亡した事案。
判決要旨 裁判所は、安衛法などの規定に基づき、会社には、有機溶剤を取り扱う従業員に対し安全衛生教育を徹底し、有機溶剤による健康障害の発生を防止するために万全の安全管理体制を整えるなどの義務があり、本件タンクの清掃作業に関しては、その作業を行わせるにあたり、あらかじめ作業手順および注意事項を具体的かつ明確に定めて周知徹底し、日頃から教育・指導等を十分に行い、従業員に注意喚起するなどして、知識不足や慣れからくる不注意・過信等を原因とする事故を未然に防止すべき注意義務があり、これを怠ったとして、損害賠償請求を認めました。