業務または通勤が原因となった傷病や疾病の療養開始後、1年6ヶ月を経過した日またはその日以後、次の要件に該当するとき、業務災害による場合は傷病補償年金、通勤災害による場合は傷病年金が支給されます。
加えて、労働福祉事業としての傷病特別支給金(一時金)が支給されます。
傷病(補償)年金は、申請によらず、所轄労働基準監督署長の職権によって支給・不支給決定がなされます。
しかし、傷病特別支給金(一時金)は、被災労働者による申請がない限り支給しないとされていますので、支給漏れのないよう注意が必要です。
傷病等級 | 傷病(補償)年金 | 傷病特別支給金 (一時金) |
傷病特別年金 |
---|---|---|---|
第1級 | 給付基礎日額の313日分 | 114万円 | 算定基礎日額*の313日分 |
第2級 | 給付基礎日額の277日分 | 107万円 | 算定基礎日額*の277日分 |
第3級 | 給付基礎日額の245日分 | 100万円 | 算定基礎日額*の245日分 |
* 算定基礎日額・・・原則として被災日(事故発生日)または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間に、その労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った額
ただし、次のイ、ロと原則の算定基礎年額を比較し、いずれか低い額が算定基礎年額となる。
傷病(補償)年金は、上記の支給要件に該当することとなった月の翌月分から支給されます。具体的には毎年偶数月(2,4,6,8,10,12月の各月)にそれぞれの前2ヶ月分が支給されます。
傷病等級 | 障害の状態 |
---|---|
第1級 (313日分) |
常に介護を要する状態 例)両目失明、そしゃくおよび言語の機能を廃しているもの、両上肢をひじ関節以上で失ったもの、両上肢の用を全廃しているものなど |
第2級 (277日分) |
随時介護を要する状態 例)両目視力0.02以下、両上肢の腕関節以上を失ったもの、両下肢を足関節以上で失ったものなど |
第3級 (245日分) |
常に労務に服することができない状態 例)一眼失明・他眼視力0.06以下、そしゃくまたは言語の機能を廃しているもの、両手手指の全部を失っているものなど |
労働者災害補償保険法施行規則 別表第二 傷病等級表より抜粋
傷病特別年金とは、いわゆるボーナス一時金といわれるものです。これまでみてきました給付については、すべて「給付基礎日額」を基礎として、その日額の○○%ないし○○○日分を支給するというものでした。おさらいまでに、この「給付基礎日額」には、臨時的に支払われる手当や、賞与として支払われるものはその算定基礎に含まれていません。
傷病特別年金は、被災日以前1年間に支払われた特別給与(3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賞与をさす。臨時に支払われた賃金は含まない。)を労災給付に反映させるためのものといえます。
この傷病特別年金では、この「算定基礎日額*」を基礎として年金額を決定します。
* 算定基礎日額・・・原則として被災日(事故発生日)または診断によって病気にかかったことが確定した日以前1年間に、その労働者が事業主から受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で割った額
ただし、次のイ、ロと原則の算定基礎年額を比較し、いずれか低い額が算定基礎年額となる。
傷病(補償)年金の支給・不支給の決定は、先に述べましたとおり所轄労働基準監督署長の職権によって行われるため、請求手続きは不要です。
ただし、以下の場合には、書類提出が求められますので留意しなければなりません。
「傷病の状態等に関する届」(様式第16号の2)を、所轄労働基準監督署長に提出。
通常は、療養開始後1年6ヶ月を経過した時点で、所轄労働基準監督署から申請の手続きをするよう指示連絡がありますので、その指示に従い提出しましょう。
毎年1月分の休業(補償)給付を請求する際に「傷病の状態等に関する報告書」(様式第16号の11)を、所轄労働基準監督署長に併せて提出。
上記の支給要件に記載されている傷病等級に該当した場合、それまで受給されていた休業(補償)給付の代わりに傷病(補償)年金が支給されることになり、問題はありません。療養の給付(治療代の給付)についても、変わらず支給が継続されます。
傷病等級に該当しなかった場合は所轄労働基準監督署長から不支給通知が送付されてきますが、引き続き休業(補償)給付が受給できます。
療養開始から1年6ヶ月の時点で、一旦、負傷または疾病症状の確認があったが、その傷病等級表が定める1級から3級に該当しなかったため、そのまま休業(補償)給付を受給継続する、という理解でよいでしょう。