「後遺障害診断書の重要性について」

1 治癒(症状の固定)後について

労基署から労働災害に認定された場合、治療費や休業補償等が支給されます。その後、怪我の程度によって数か月から1年程度治療を継続することになりますが、残念ながら、これ以上治療しても、怪我の症状が完全には回復しない状態、いわゆる治癒(症状の固定)と判断されることがあります。

2 後遺障害の認定

症状の固定と判断された場合、残存する障害の状況、程度に応じて「障害等級認定基準」に基づき、労基署から後遺障害の認定がなされる場合があります。「障害等級認定基準」に該当しなければ、症状が固定したとしても、後遺障害とは認定されません。

3 「障害等級認定基準」と後遺障害診断書

「障害等級認定基準」は、様々な怪我について、どのような症状が残存していれば、後遺障害に該当するのかという基準が記載されていますが、症状が残存しているのか否かを判断するための考慮要素として、非常に重要な資料となるのものが、後遺障害診断書になります。

例えば、腕や足に痛みが残存した状態で症状の固定に至った場合、よく問題になるのが、可動域の制限がどの程度あるのかについてです。原則として、障害を受けていない側の関節(健側)と比較して、どの程度動きにくくなっているのかを医師が測定し、その可動域の差によって、後遺障害の該当性及び後遺障害の等級の程度が定まります。後遺障害診断書には、医師が可動域を測定した結果の記載欄があるため、後遺障害診断書を作成する際に、医師が可動域の測定をします。

このように、後遺障害診断書の記載内容は、後遺障害の該当性及び等級の程度の判断において、非常に重要な資料となります。

4 可動域制限の測定値の差異

上記のとおり、可動域制限は後遺障害の該当性を判断するうえで重要な指標になりますが、時々、実際の可動域とは異なる数字が記載されているケースが存在します。様々な要因が考えられるため一概には言えませんが、他のカルテ情報と比較して、後遺障害診断書に記載された可動域制限の数値が少ないため、再検査したところ、大幅に数字が変わり、後遺障害に該当する数値になった事例もあります。

5 弁護士への相談の重要性

後遺障害診断書は、非常に重要な資料である反面、その記載内容が必ずしも現状を正確に反映したものになっていない可能性があります。労災の場合、労基署の判断に不服がある場合には、判断結果を知った日から3か月以内に不服申立手続をしなければ、判断が確定してしまいます。

労災に遭われた際には、早期のタイミングで弁護士へご相談ください。