労災の慰謝料を分割払いで受け取る方法|保証人・公正証書の重要性を解説

1 はじめに

労災事故では、治療費や休業損害は労災保険から支給がなされますが、慰謝料や逸失利益については、支給がなされないため、会社や加害者側へ直接請求する必要があります。会社の方が個人よりも資金力が豊富であることから、会社側へ請求することが多いですが、会社が経営難の場合、慰謝料等を請求しても、一括での支払いができないと言われることがあります。

2 分割払いについて

事実関係に争いがない場合であっても、会社側に資金がなければ、慰謝料等を受領することはできないため、被害者側としては、分割払いに応じざるを得ないと思います。

しかし、単に分割払いと定めるのではなく、保証人を付けること、和解書を公正証書で作成すること、支払いが遅れた場合には、期限の利益が喪失するとともに、遅延損害金の規定を設けること等の対策が必要となります。

(1)保証人を付すこと

労災の申請があった場合、事業所を監督している労働基準監督署が、労災事故の状況などを調査します。

最も有力な候補は、相手方会社の代表者や役員になりますが、保証債務を締結するためには、書面で作成すること及び当該保証人の同意が必要となるため、必ず保証人が付けられるわけではないという所に注意が必要です。

(2)公正証書で作成すること

法人の資金力に疑念がある場合、分割払いが滞る可能性があるため、仮に支払いが途絶えた場合の回収方法も検討する必要があります。最終的に慰謝料の総額や、支払方法等で合意に至った際には、和解書や合意書等を作成しますが、実際に支払いが滞った場合には、別途裁判所にて強制執行の手続きを行う必要があります。

仮に、当該和解書等を公正証書で作成していた場合には、より簡易な手続きで強制執行を行うことができるというメリットがあります。

弊所では、相手方の会社が分割払いしかできない際には、公正証書で和解書を作成することが多いです。

(3)期限の利益の喪失と遅延損害金の規定

支払いが滞った場合には、残金を一括で請求できる旨の条項(期限の利益の喪失)を定めるとともに、支払が滞った場合には、遅延損害金が付く旨の条項を作成することが重要です。

3 終わりに

慰謝料等の分割払いに応じる場合には、支払が滞った場合まで想定したうえで、合意書、和解書等を作成する必要があります。お困りの際には、専門家へご相談ください。

労働災害でお困りの方は、弊所までお問い合わせください。