「保有個人情報開示請求制度について」

第1 労働災害の認定

労働災害に当たるかどうかの判断は、労働基準監督署が行います。

被災した労働者には、労働基準監督署から労働災害に当たるか否かについての判断結果が届きます。

もっとも、当該通知には、結果と理由のみ完結に記載されているものが多く、当該事故の原因がどこにあり、どのような証拠に基づき労働基準監督署が判断したのかまで読み取ることは困難です。

このような具体的な情報まで知りたい場合には、どうすればよいのでしょうか。

第2 保有個人情報開示請求制度の利用

自身の個人情報であれば、国の行政機関に対して、個人情報の開示を請求することができます。当該制度を利用すれば、上記の労働基準監督署の具体的な判断等の情報を見ることができる可能性があります。

では、具体的にどのように請求すればよいのかについて、ご説明させていただきます。

1 請求先

労災の申請があった場合、事業所を監督している労働基準監督署が、労災事故の状況などを調査します。

当該労働基準監督署の所属する労務局が、保有個人情報開示の請求先になります。

2 申請用紙及び必要書類

労務局のホームページに委任状、申請用紙等の書式がございます。

必要書類については、各労務局によって異なるため、ホームページなどでご確認ください。基本的には、住民票、戸籍、印鑑証明等が必要となることが多いです。

3 開示請求するべき書類

労働基準監督署は、被災者が通院した病院のレセプトを収集したうえで、療養給付、療養費用、休業償給、傷害補償給等の給付の可否を判断いたします。

そして、これらの給付の可否について、具体的な検討結果を記載するのが調査復命書と呼ばれるものです。
基本的には、これらの資料の開示を求めていきます。

また、添付書類が存在する可能性もあるため、添付書類の開示も併せて求めた方がよいと思います。

他方、業務災害であれば、事業所が労働基準監督署へ提出した書面も存在することが 想定されます(労働者死傷病報告等)。

また、労働基準監督署が事業所に対し、安全衛生指導等をしている場合もあるため、これらも開示請求した方がよい資料と言えます(安全衛生指導復命書等)。

4 請求書類の特定

上記のように、開示請求したい資料はたくさんあります。

もっとも、全ての労働災害について、労働基準監督署ないし労務局が上記の資料を作成しているわけではございません。

保有個人情報開示請求制度は、開示を求める個人情報について、ある程度特定する必要があります。

とりあえず、考えられる限りの情報の開示を求めてみるという方法もありますが、まずは、労働局へ電話することをおすすめします。

労災事故の年月日などの情報を伝えたうえで、保有個人情報の開示をしたいと考えているが、どのような資料があるのかを質問すれば、お答えいただける場合が多いです。

5 開示・不開示決定の通知等

開示・不開示決定は、原則として30日以内に書面で通知されます。ただし、個人情報の量が多い場合には、さらに30日かかる場合もあります。

第3 弁護士への委任について

上述のとおり、開示請求するべき資料は多く、また、事案によっても異なります。個人でも保有個人情報開示請求をすることはできますが、専門家に任せた方が安心だと思います。

労働災害でお困りの方は、弊所までお問い合わせください。