「労働保険審査請求制度について」

1 はじめに

(1)「一時金支給決定通知」

労働中の事故によって怪我等をした場合、労働基準監督署から「一時金支給決定通知」が届くことがあります。
これは、労働基準監督署が当該事故を労働災害であると認定した際に届くものであり、 同決定通知には、当該事故による怪我等が「労働者災害補償保険法施行規則別表第一障害等級表」(以下「別表」といいます。) の障害等級の何級何号に該当するのかについて、労働基準監督署の判断結果が記載されています。

同決定通知には、「傷病・障害等級号」に数字が記載されています。 左から2桁が別表に基づく障害等級で、残りの2桁が別表に基づく身体障害の号数になります。

労働基準監督署から支払われる給付金等の金額は、別表の障害等級の等級ごとに異なるため、非常に重要な認定になります。

(2)「不支給決定通知書」

労働中の事故による怪我等について、労働基準監督署が、別表の障害等級に該当しないと判断した場合には、「不支給決定通知書」が届きます。

(3)認定結果に対する審査請求

これらの認定結果に不服がある場合には、審査請求をすることで争うことができます。

2 審査請求について

審査請求とは、労働基準監督署が行った処分の内容に不服がある場合、労働者災害補償保険審査官に対し、処分を知った日の翌日から3か月以内に審査請求書を提出することで、処分内容について再度の検討を行うよう求めることができるものです。

(1)期間制限

処分を知った日とは、基本的には「一時金支給決定通知」や「不支給決定通知書」が労働基準監督署から届いた日です。 なお、これらの通知には、審査請求が行えること及びその期限の記載がされています。 通知が届いてから3か月以内に審査請求書を提出しなければ、 その後は労働基準監督署の決定を争うことができなくなるため、注意が必要です。

(2)争い方

労働基準監督署の認定結果によって異なりますが、例えば、「不支給決定」の場合には、別表の該当性を争います。 また、「支給決定」の場合でも、別表のより高い等級への該当性を争うことが多いです。

(3)労働基準監督署の決定過程

労働基準監督署の認定結果を争うことになる以上、そもそも、労働基準監督署がどのような判断過程を経て、 決定を行ったのかについて知る必要があります。 労働基準監督署の担当者の方に電話すると、決定の過程を教えてくれることが多いです。
もっとも、労働基準監督署は膨大な資料等から総合的に判断していることがほとんどですので、 詳細な判断過程を知るためには、保有個人情報の開示を行うことが望ましいです。保有個人情報の開示については、 該当ページ をご参照ください。

(4)新しい証拠の必要性

労働基準監督署の決定を覆すには、新しい証拠がないと難しいのが現状です。 主治医の先生と面談し、MRI等の画像を検証するなど、医学的に別表の後遺障害該当性を立証することが必要となります。

3 終わりに

別表の後遺障害の認定について争う場合には、法的な知識だけでなく、医学の知識も必要となります。弊所では、労働災害事件を扱う場合、主治医の先生と早期に面談することを心掛けております。また、専門の鑑定機関と連携の上、医療鑑定書を作成し、法的な観点と医学的な観点の双方から後遺障害の認定可能性を検討しております。

労働災害でお困りの方は、弊所までお問い合わせください。

労働基準監督署の認定結果を争う場合には、3か月という時間的制約もあるため、お悩みの際にはお早めにご相談ください。

以上