弁護士 秋吉 一秀
通勤中の交通事故でけがを負った場合、その事故が通勤災害に該当すれば、労働災害(いわゆる労災)として取り扱われます。
通勤災害の考え方や要件については、別記事で詳しく解説していますので、ここでは詳細な説明は割愛します。
※通勤災害の解説記事はこちら →通勤災害とは?
本記事では、通勤中の交通事故が通勤災害として認定され、さらに後遺障害の認定がなされた後、何をすべきかに焦点を当てて解説します。
通勤中の交通事故について、労働基準監督署により通勤災害と認定されると、通常は次のような流れになります。
・会社を経由して、必要な労災関係書類を作成・提出
・労働基準監督署が、治療経過や診断書等をもとに審査
・労災の基準に基づき、後遺障害に該当するかを判断
後遺障害に該当するかどうかの結果は、本人宛てに直接通知されるのが一般的です。
多くの場合、はがきサイズの書面が自宅に郵送されます。
ここで、非常に重要なポイントがあります。
労災保険からは、交通事故に関する慰謝料の支払いは受けられません。
労災保険で支給されるのは、主に次のようなものです。
・療養補償給付
・休業補償給付
・障害補償給付(年金または一時金)
これらは、あくまで「労働者の生活保障」を目的とした給付であり、
精神的苦痛に対する賠償(慰謝料)は対象外です。
通勤中の交通事故である以上、事故の相手方(加害者)が存在するケースが多くあります。
その場合、
・事故の相手方本人
・相手方が加入している自賠責保険・任意保険
に対して、後遺障害慰謝料等を別途請求できる可能性があります。
つまり、
労災で後遺障害が認定された=すべて終わり
ではありません。
ただし、ここで注意が必要です。
労災と自賠責では、後遺障害の認定基準が完全に同一ではありません。
そのため、
交通事故の相手方に対して後遺障害慰謝料等を請求するためには、自賠責保険に対して、改めて後遺障害認定の手続きを行う必要があります。
その際には、
などを取り寄せる必要があり、情報開示請求などの手続きが必要になることもあります。
このあたりの実務は、一般の方にとって分かりづらく、手間もかかります。
※情報開示請求の解説記事は→こちら
通勤中の交通事故の場合、
という複数の制度・窓口が関係します。
それぞれで考え方や手続きが異なるため、「知らなかった」「手続きをしなかった」ことで、本来受けられるはずの補償を逃してしまうケースも少なくありません。
通勤災害として認定され、さらに後遺障害が認定された場合には、その後の対応が極めて重要です。
これらを適切に進めるためにも、交通事故と労災の両方に精通した弁護士へ早めに相談することをおすすめします。