目に異物が入る事故は、様々な業種で起こり得ます。例えば、薬品等の有害物を扱う業種において、目に有害物が入り、角膜炎等の障害を生じることがあります。また、工事現場において、鉄粉等の異物が目に入ることもあります。ほかにも、第三者が移動させた物や手が当たるなどして目を怪我する場合があります。
目に異物が入った場合は、即日眼科にかかることが大切です。洗浄等適切な措置を受ければ、症状が残らない場合もあります。
しかし、残念ながら、眼球やまぶたに異常が残ってしまうこともあります。そのような場合には、どのような労災保険の給付が受けられるのでしょうか。
業務上、あるいは通勤中の負傷について、症状が残っているのにこれ以上治療効果が見込めない状態になり、障害等級に該当する場合は、業務上災害の場合は障害補償給付、通勤上災害の場合は障害給付の対象になります。
障害(補償)給付の対象になる場合は、労働福祉事業から障害特別支給金と、障害特別年金か障害特別一時金が支払われます。
障害(補償)給付は、障害の内容によって、受給するのが年金か一時金か異なります。
障害(補償)給付・障害特別支給金・障害特別年金・障害特別一時金について詳しくは、こちらのページ(https://roudousaigai.net/rousaihoken/disabling_benefit/)をご覧ください。
目に症状が残った場合で、障害等級第1級から第7級に該当する場合は、障害(補償)年金、障害特別支給金、障害特別年金の支給対象になります。
| 身体障害 | 障害等級 |
|---|---|
| 両目が失明したもの | 第1級 |
| 一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの 両眼の視力が0.02以下になったもの |
第2級 |
| 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの | 第3級 |
| 両眼の視力が0.06以下になったもの | 第4級 |
| 一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの | 第5級 |
| 両眼の視力が0.1以下になったもの | 第6級 |
| 一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの | 第7級 |
目に症状が残った場合で、障害等級第8級から第14級に該当する場合は、障害(補償)一時金、障害特別支給金、障害特別一時金の支給対象になります。
| 身体障害 | 障害等級 |
|---|---|
| 一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの | 第8級 |
| 両眼の視力が0.6以下になったもの 一眼の視力が0.06以下になったもの 両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
第9級 |
| 一眼の視力が0.1以下になったもの 正面視で複視を残すもの |
第10級 |
| 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
第11級 |
| 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
第12級 |
| 一眼の視力が0.6以下になったもの 一眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの 正面視以外で複視を残すもの 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
第13級 |
| 一眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの | 第14級 |
なお、障害(補償)給付、障害特別支給金・障害特別年金・障害特別一時金の申請書は1枚の様式にまとまっていますので、この1枚を労働基準監督署に提出すれば申請できます。
目に異物が入り、1年6か月経っても症状が治らない場合で一定の場合には、長期間の療養が必要になるとして、業務上災害の場合は傷病補償年金、通勤時災害の場合は傷病年金の対象になります。
傷病(補償)年金の支給対象になる場合は、傷病等級に応じて労働福祉事業から傷病特別支給金・傷病特別年金が支給されます。
傷病(補償)年金・傷病特別支給金・傷病特別年金については、こちらのページ(https://roudousaigai.net/rousaihoken/invalidity_benefit/)をご覧ください。
目の障害に関連する傷病等級は以下のとおりです。
| 障害の状態 | 傷病等級 |
|---|---|
| 両目が失明しているもの | 第1級 |
| 両目の視力が0.02以下になっているもの | 第2級 |
| 一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になっているもの | 第3級 |
傷病(補償)年金の支給・不支給の決定は、所轄の労働基準監督署長の職権によって行われます。療養開始後1年6か月を経過しても傷病が治っていないときには、その後1か月以内に「傷病の状態等に関する届」を所轄の労働基準監督署に提出する必要があります。
両目が失明し、障害(補償)年金、または傷病(補償)年金第1級・第2級に該当する場合は、介護(補償)給付を受けることができます。
目に傷害を負っても、慰謝料や逸失利益(目に障害が残ったことにより、仕事をできなくなった分の損害)は労災保険からは支払われません。そのため、これらは別途会社に対して請求する必要があります。
業務中に目に傷害を負い、会社に対して損害賠償請求がなされた裁判例を紹介します。
スイミングスクールのインストラクターが、背泳のスタート指導中、泳力の低い受講生を二コースと三コースに分けて配置し、三コースの受講生にスタート姿勢を取らせた後、約2メートル離れた位置で別の受講生の指導に目を向けていたところ、三コースの受講生が合図なくスタート動作を行い、その手がインストラクターの顔面に当たり、右眼瞼・結膜裂傷、網膜裂孔等の傷害を負った事案です。
この事案においては、当該インストラクターが別のコーチと2人で指導をする予定でしたが、コーチに予定が入り指導できなくなったという事情がありました。インストラクターは指導員の補充を上司に要請しましたが、聞き入れられず、1人で指導をすることになりました。
本件では、①事故当日2人で指導を行う予定になっていたが、予定に反して1人で指導させることになったインストラクターに対し、上司が例外的にプールサイドで指導するよう指示するか、泳力の低い受講生を1コースだけに配置するよう指示すべきであったのにその指示をしなかったこと、②受傷後も上司がプール内で指導を続けるよう指示したこと、③事故後、医師はインストラクターに対し、1時間程度ならプールに入ってよいと指導していたが、上司がインストラクターに対し、ある日は3時間、その次の日は4時間プール内で水泳指導するよう指示したことが、上司の不法行為上の過失にあたるかが問題になりました(上司の過失が認定されれば、スイミングスクールの運営会社は使用者責任(民法715条)を負うことになります)。
この点、裁判所は以下のように述べて上司の過失を認定しました(判決文中、上司の名前部分は「上司」としています)。
「泳力の低い受講生を対象とする場合には一コースに一指導員を要すると解されるのに、本件においては泳力の低い受講生を二つのコースに同時に配置したのであり、適切を欠いたといわざるを得ない。
すなわち、被告上司としては、予定に反して、原告一人に指導させることになったのであるから、例外的にプールの上で指導するよう指示するか、手足に触れて指導する必要のある、泳力の低い受講生を一コースだけに配置するよう指示すべきであった。
さらに、前記のとおり、被告上司は原告が本件事故により負傷したにもかかわらず、プール内で指導を続けるよう指示したり、平成二年四月二一日及び二二日には、医師の許可した時間を越えて、原告にプールに入るよう指示したものであり、その結果、原告の傷害が悪化した面があるといわざるを得ない。」
そして、会社に損害賠償責任があると認定がされました。
一方で、インストラクターのことを「中堅ないしベテランの指導員」と認定し、危険性を予期できたとして、5割の過失相殺を認定しました。